〜食物繊維取り便の観察も〜
大腸は盲腸、上行、横行、下行、S状結腸と肛門に至る直腸があり、長さは個人差はあるが1.5から1.7メートル。大腸がんの原因は「肉食中心の高脂肪食や低繊維食など食事の欧米化」「アルコールの飲み過ぎ」などで、家族に大腸がんやポリープのある人も遺伝的になりやすい。
部位では直腸43%、S状結腸28%で全体の約70%を占め肛門近くに発生しやすい。
ポリープの一部ががん化した「早期」から「末期」まで段階があり、がんが小さいうちは自覚症状はほとんどないが、進行するにつれ「血便や便秘・下痢などの便通異常」「便通が細い」「残便感」「腹部膨満感」「腹痛」「腹部のしこり」などが現れる。
全国のがん死亡率は、胃がんが男女とも年々低下し大腸がんが増加、女性は2003年に胃がんを抜き1位となった。県では胃がんより大腸がんが多く、肺がんについで死亡率2位と高い。
検査は「便潜血」「レントゲン」「大腸内視鏡」などで、潜血検査は集団検診などで行われる。県の検診状況は対象者33万〜35万人、受診者約5万人、受診率15%前後で推移し、2003年度は対象者354115人、受診者54228人で受診率15.3%。要精検者は3804人で、精検査率7%。がん発見率88人、0.16%だった。
がんが粘膜内や下層内にある早期がんの切除後の5年生存率は、粘膜内100%、下層99%。だが筋層に及ぶ進行がんは66%まで一気に低下、その後も進行度で明らかに低下する。いかに早期にがんを見つけ、切除するかが重要だ。
当院で3年6ヶ月の間に内視鏡検査を受けたのは男性531人、女性453人の計984人で、50〜60歳代が多い。がんが見つかったのは「早期」16、「進行」19の35例で、60、50歳代に多い。全検査に対するがん発見率は3.6%だった。
検診などの便潜血が陽性で来院し見つかったのは、早期7例、進行がんも3例おり、検診が早期発見・治療に結びついた。今後、大腸がん検診の受診率を上げることが重要。また大腸がんになった人の5〜10%に新たに大腸がんが発生しやすいという報告もあり、定期的な大腸検査も必要だ。
便潜血、血便は大腸がんだけの症状ではなく、痔を含め良性疾患が原因の場合も多い。排便時出血や血便などがあり、良性の若年性ポリープや大腸炎だった患者もいる。
予防には、動物性脂肪の多い肉食やハム、ソーセージなどの加工食品、アルコール類を控え、豆や野菜など繊維食品の多い食生活が大事。便秘に気をつけ、排便後の便を観察する習慣をつけてほしい。40歳以上は年に一度検診を受け、便潜血検査が陽性なら内視鏡検査を受けてほしい。
がんの進行度 | 5年生存率 |
---|---|
粘膜内にとどまるもの | 100% |
粘膜下層までにとどまるもの | 99% |
固有筋層に及ぶがリンパ節転移がない | 66% |
固有筋層を穿通するがリンパ節転移なし | 54% |
腸管壁内に限局しリンパ節転移あり | 43% |
腸管壁穿通リンパ節転移あり | 22% |
遠隔転移や周囲臓器への浸潤あり | 14% |